出版社内容情報
手塚 治虫[テヅカ オサム]
内容説明
漫画界の巨匠・手塚治虫は、時を経てもけっして色あせない、世代を超えて読み継がれる数々の名作を遺しました。本書は、手塚治虫が日本文化に着想を得た作品を選りすぐって、一冊にまとめたものです。そこには、日本の古典芸能・伝承などを通して、人々の愚かさ、愛おしさ、切なさ、残酷さ、ひたむきさなど、深遠なる人間という存在が描かれています。
著者等紹介
手塚治虫[テズカオサム]
1928年、大阪生まれ。大阪大学医学専門部卒。47年に『新宝島』を発表。映画の手法で雄弁に語られたドラマとして注目される。医専時代、すでに学業の傍ら流行作家となり、やがて児童雑誌に進出してストーリー漫画の世界を開拓した。61年、手塚治虫プロダクション動画部(のち虫プロ)を設立してアニメーションの分野でも活躍。作品は子供漫画だけでなく、大作『火の鳥』では自らの宇宙観、生命観を余すところなく展開し、漫画の読者を大いに広げた。89年に60歳で亡くなる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zero1
70
手塚作品はかなり読んだが本書には未読短編が含まれていた。「おけさのひょう六」は猫のチリが魅力。「四谷快談」は戦争の色が濃い。村上春樹みたいにヤクルトファンになる?「トキワ荘物語」はアパートを擬人化。「まんが道」(藤子)を再読したくなる。「いないいないばあ」は座敷わらし。「ダリとの再会」は「クララとお日さま」(イシグロ)を思い出す。何故この作品が収録されたかが興味深い。「安達が原」は鬼婆伝説をSFで。ライフワーク「火の鳥」に通じるタイムパラドックスと悲劇。どれも深い。2022/06/10
みーなんきー
25
昔からの伝承などをオムニバス形式で、次々と表現したもの。座敷わらしの話は面白かった。ツルの恩返しの内容も、貧しかった男が段々と、お金に目がくらむようになり、奥さんがやせ細っていく様子はせつない。伝承文学が妙に面白く感じられる最近の自分である。歳のせい?2017/01/10
ねね
13
既読が殆どですが、四谷快談とブラックジャックの回がやっぱり特に好きです。BJの「死んで行く花より野に生えて生きる花のほうがどんなにいいかわからん」の台詞とコマは、初読の時から大好き。手塚先生は戦争を越えておられるし、意味の無い死の美学は特に嫌悪しておられたのではないかと愚考する次第。解説は大した内容ではなく、手塚先生を好きな方なら既に解っているような事。普通に先生の漫画を楽しむための本です。安達ヶ原は日本古典文学を焼き増した、先生お得意の作品。こういうのがもっとあれば能入門が容易になりそう。2017/03/19
fumikaze
11
漫画「手塚治虫 日本文化傑作選」。殆ど読んだことがある作品だったが、やっぱり良かった。著者の漫画は弱者、庶民、貧しい者の味方だ。私は著者の作品を何度も繰返し読んでいるが飽きることがない。最後の、人肉を食して生き延びながら恋人を待ち続ける話は読むたびに泣ける。2017/02/25
ベル@bell-zou
9
先日、NHKBSプレミアムで異界がテーマの怖い話を放送していて、福島県安達ケ原の鬼婆の伝説を手塚治虫が漫画にしていると紹介。気になり、即、図書館へ。//「安達ケ原」社会・政治的背景をテーマに時空を超えたストーリー。悲惨で無情な鬼婆伝説を手塚治虫が描くと壮大で深みのある物語になる。やはり凄い。「おけさのひょう六」想定外・不意打ちのネコ登場でラストはウルッと…。「ダリとの再会」この本の中では異色と感じた。でも、一番好きな話。手塚作品を読むと人間の欲深さの罪について考えさせられる。2017/08/13