月刊後３号目になるでしょうか。正直なところ、わたしは驚いています。主にいい意味で。
以前の百合姫は、とても危なっかしい雑誌でした。これいいなーと思った作品がフェードアウトしていったり、いつの間にかお気に入りの作家さんがいなくなったり。間に合わなかった作品をラフのまま載せたりもしてましたね。あれはとても心が痛みました。作品を締め切りまでに上げられなかった作家さんに対する制裁なのかもしれませんが、あんなものは読者のほうが気分が悪くなります。載らないほうがよほどマシだ。
そんな触るものみな傷つける雑誌だった百合姫が月刊になると聞いたときは、楽しみというより「大丈夫なのか……？」という不安のほうが大きかったです。落とす作家さんが続出する地獄絵図になるのではないか、そう思っておりました。
しかし蓋を開けてみればびっくりで、思った以上に安定しています。少なくとも、ここまでで大きな脱落者は見当たらない。
そして新連載は、今までの百合姫作品とは確かに雰囲気の違う感じのが多いですが、どれもかなり面白いです。そして『月が綺麗ですね』『2DK、Gペン、目覚まし時計。』『捏造トラップ』などの隔月刊時代から安定していた作品も、ちゃんとついてきている（『Citrus』はわたしの趣味とは微妙に違うんだ…すまない）。月刊になるということは単純計算で２倍描かないといけないので、これはひとえに作家の皆様の努力の賜物なのでしょう。
一方で、月刊化によって失われたものも少なくはありません。わたしが一番楽しみにしていた『桃色トランス』は隔月刊時代の数号の休載を経て、月刊化とほぼ同時に連載終了しました。まあ仕方ない。隔月という話で引き受けて、後から「月刊化するんで」といわれても「はあ!? 無理に決まってるだろ!!」ってなるのが普通だ。こるり先生は悪くない。
百合姫は百合という、市場がありそうで実はあんまりないレッドオーシャンにおいてほぼ唯一生き残った専門誌ですが、専門誌であるからこそフロントランナーである必要はないと考えます。『あの子にキスと白百合を』『やがて君になる』など専門誌でないところから百合のヒット作がちらほら出てきてますが、仕方ない。ああいう作品は、実験作のつもりでやってみたら大ヒットになるなんてのは偶然の助けなしには生まれ得ないし、あれらは専門誌がやるべき仕事ではないのです。百合姫の編集部はめっちゃ悔しがってるかもしれないけど（わからんが）、そこは悔しがるところでは多分ない。
わたしが専門誌に期待するのは、「こういう百合もあるんやけど、どう？ 良くない？」って作品を出してくれることです。そういう意味で、新連載がいろんな百合の形を提示してきたこと、しかもそれらがみな安定して面白いことを高く評価しています。
では何故★４つかというと、わたしの一押しであるみかん氏先生の『Now Loading...!』が掲載順位的に低空飛行だからです。みかん氏先生は同人誌みてるとベタ甘な作品のほうがいいのではと思うんで、作品内容とミスマッチだったのかなあ……。いっぽうで、昔一緒に仕事したことある広瀬まどか先生の『みみみみっくす！』が好評そうなのは何よりでございます。ようやく先生の時代が来るのかとワクテカしてますよ。
あとはそうですね、このレビューが１年くらい経ってから「やっぱり百合姫は百合姫だったよ…」ってならないといいなあ。
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