他のレビューアーのコメントにある通り、出発早々、逆光により、窓にカメラのレンズ枠の映り込みが見られる。
まれに、レンズ枠に刻まれている文字も読めそうなぐらいの、はっきりとした映り込みもある。
逆光のため、窓に紫色の光の縦の帯も発生する。
逆光のため、空は白く、画面全体も白っぽくなっている。
逆光は見づらい映像だが、窓が比較的キレイな為、イラつくほどではない。
ch32「壺阪山駅」を過ぎると、逆光もだいぶ緩和されてくる。
本作品は、2011年8月に発売された「VB-6534 近鉄さくらライナー」の逆方向バージョンである。
前作は、吉野から大阪に向かう方向なので、気づかなかったが、大阪から吉野に向かうと、前面の山々を背景にみながらの視聴となり、近鉄吉野線は、結構な山岳路線であることがわかる。
特に、JR和歌山線との連絡駅となる「吉野口駅」から先が、そうだ。
よって風景的には、本作品の方が山が見える分、「近鉄さくらライナー」よりも見どころが多く、また前作より6年が経って4K撮影による作品でもあり、映像の質も、本作品の方が良好である。
ただ、これは、あくまで両作品を比較した上での話であり、前作の映像も比較的良好である。
前作にはハイビジョン撮影の但し書きはないが、恐らくハイビジョン撮影と思われる。
(ハイビジョン = 1440×1080i 2K = 1920×1080 4K = 3840×2160)
細かいことを言うと、「近鉄さくらライナー」は、4K-27inchモニターで視聴すると、撮影カメラの問題で、画像圧縮ノイズである「コマ送りノイズ」や「スライムノイズ」が、森など草木の多い部分に見られるが、気にしなければいい。
さて、ここからはブルーレイ(BD)の規格の話となる。
BDは2002年に登場した古い規格で、最大の解像度が2K(1920×1080)であり、そのフレームレートは30fps(1秒間に30枚の絵を表示する)となっている。
よって、4K(3840×2160)カメラで撮影した映像も、2Kに落とした映像で提供される。
また、60pで作品を提供することができず、30i(interlaced)か30p(progressive)での提供となる。
本作品は、4K-60pで撮影された映像を編集し、2K-30iにダウンコンバートして、BDとして提供されている。
2Kカメラではなく、4Kカメラで撮影する理由は、画像の編集作業やその他の過程で、必ず画質が劣化するのだが、4Kで撮影しておけば、2Kまで画質が劣化することはない。
しかし2Kカメラで撮影した映像は、マスターを作成する過程で、必ず2K以下に劣化してしまうので、4Kカメラで撮影され完成したマスターを2Kにダウンコンバートした方が、2Kカメラで撮影して編集されたファイルよりも品質がいい、という理屈である。(もちろん、それ以外にも様々な理由があります。)
小生は2K-20inchと4K-27inchとの両方のモニターで映像を視聴し、作品の評価をしているが、やはり4Kカメラで撮影された作品の方が、大きなモニターで視聴した際に、より快適な展望を楽しむことができる。
ただし小生の場合、大きなモニターと言っても27inchなので、BDの解像度は2Kで十分と感じている。
一方、BDのフレームレート30は結構な問題となる。
動画の原理はパラパラ漫画なので、1秒間に表示できる画像の枚数が30枚と少ないと、映像がカクカクする感じがするのである。
特に動体視力の良い人にとっては、フレームレートが30fpsと少ない問題は致命的だろう。
BDの規格が2K- 60pに対応していれば、全く問題なかったのだが、今更どうしようもない。
プログレッシブ映像30pとは、0.03(1/30)秒ごとに、一枚一枚キレイに撮影した写真を、1秒間に30枚表示することで、動画にしている映像だと思えばいいだろう。
一方、ビコムさんの作品のようなインターレース30iの場合、まずは1秒間に60回シャッターを切って、60枚の画像を撮影する(→ 60p)。
そのように撮影された画像の垂直解像度が1080だとすると、上から1、3、5〜1079と奇数番目だけを残して、画像を横に櫛状に鋤く(すく)。
そうすると垂直解像度は540に減少する。
次に、上から2、4、6〜1080と偶数番目だけを残して、画像を横に櫛状に鋤く。
この場合も、垂直解像度は540に減少する。
このように、鋤く位置を奇数と偶数で一段ずつズラして、横に櫛状に間引きした画像を作成する。
そのような奇数と偶数の画像を、ちょうど櫛と櫛との隙間を合わせるように、一枚に合成して、30枚のギザギザ画像を作成する。(540 + 540 = 1080)
このように作成された画像をインターレース30iと呼ぶ。
インターレースの場合、実際のフレームは30枚なのだが、奇数、偶数の2つのフィールドを合体させているので、デジタルテレビで再生する際に、1つのフレームの中から、櫛状に欠けた半分の奇数映像と、半分の偶数映像を取り出し、両方の映像の欠けている部分を、前後の画像を参照して補完し(← デインターレース)60fpsで再生されるのである。
インターレース、プログレッシブ、フレームレートに関する話に興味のある方は、テイチクさんの2017年作品「TEXJ-45020 E351系 特急スーパーあずさ」の読者レビューを参考にして欲しい。
と言うことで、インターレース作品30iはフレームレート60fpsで滑らかに再生されるだが、一つ一つの画像の垂直解像度は、実際の半分しかないので、静止画像が不鮮明となる。
一方、インターレースでない普通の映像はプログレッシブと呼ぶが、プログレ映像は、フレームを二つに分解しないので、静止画像がくっきりと鮮明である。それこそ看板の文字もハッキリ判別できるぐらい、切れ味のよい映像だ。
プログレが写真画質なら、インターレースは絵画画質と言えるだろう。
ニュース、ドラマ、バラエティ、スポーツなど、通常の映像コンテンツなら、30iのインターレース映像で問題ない。むしろ30iの映像はフレームレート60fpsで再生してくれるので、動きが滑らかに再生される。
一方、全面展望作品は、電線、電柱の横バー、線路など、画面を斜めに走る線が常に動いている映像なので、そのような線は、どんなに綺麗にデインターレースしても、大きな画面で視聴すると、プログレッシブの映像には敵わない。
と言うことで、窓の汚れ、逆光、露出の問題などの条件が同じであれば、30pと30iのどちらの映像を好むかは、個人によって異なると思われる。